腰椎椎間板ヘルニアが注射で治る?

投稿日:2018年6月28日|カテゴリ:院長のひとりごと

腰椎椎間板ヘルニアが注射で治る?

話題の新薬「ヘルニコア」について

*「ヘルニコア」とは?

2018年8月に、科研製薬株式会社より、腰椎椎間板ヘルニアに対する新薬「ヘルニコア」が発売される予定です。2018年5月に薬価収載されました。
内服薬ではなく注射薬で、注射をする部位は血管内や筋肉内ではなく、腰の椎間板内に直接針を入れて注射をする薬です。従来、椎間板ヘルニアに対する注射治療は、硬膜内ブロック注射やトリガーポイント注射などがありますが、これらはすべて「痛みを軽減させる目的」の注射であり、突出している椎間板ヘルニアに直接的に作用するものではありませんでした。この新薬は「突出した椎間板ヘルニアを縮小させる目的」の注射で、ヘルニアそのものに直接作用する初めての薬です。

*椎間板ヘルニアを患うすべての患者がこの治療で治る?

すべての患者がなんでもかんでも治るわけではなく、「比較的若年(20-69歳)の椎間板変性が進んでいない後縦靭帯下脱出型ヘルニアのみ」と適応は限られています。これは、我々脊椎脊髄専門医がMR検査画像などで判断できるものです。

*この治療はどこでも可能?

基本的には局所麻酔で入院不要で行うことはできますが、椎間板内注射ですので専門技術が必要です。
日本脊椎脊髄病学会は適正使用のために治療を行うことができる施設基準を設け、「学会指導医のいる施設、ショック発生時に緊急対応できる施設、緊急時に脊椎手術をできる施設、入院設備のある施設、透視装置があり清潔操作を行うことが可能な(手術室を備えた)施設」でしか治療を行ってはならないこととしています。したがって、当院で行うことはできません。

*安全性は?

もっとも恐ろしいものでは(一般的な薬剤もすべてそうですが)、アナフィラキシーショックの可能性があります。添付文書では頻度不明となっています。
椎間板内にコラゲナーゼというGAGを特異的に分解する薬剤を注入するわけですから、椎間板を変性(退行)させることになり、長期経過後の合併症(腰椎不安定性の出現など)も気になるところです。院長はアメリカ留学時代に椎間板再生治療を研究していた過去もあり、椎間板を変性させてヘルニアを縮小させるというのは逆転の発想です。

*院長の考え

手術を行った場合でも椎間板変性の進行はある程度は予想されるものです。
「局所麻酔での注射だけ」でヘルニアが縮小することが高い確率で期待できるわけですから、安全性が確認され、適応を選べば、期待しても良い治療法ではないかと考えています。
新薬は、市販後の調査であまり良い成績が得られずに、尻すぼみとなっていく薬剤もありますので、すぐに新しいものに飛びつくのではなく、今後、実際に使用された先生から報告される治療成績に注目していきます。使用された先生のご意見もお聞きしながら、適応のある患者さんが希望されれば、治療可能な施設にご紹介させていただきたいと考えています。

(イラストは「新薬情報オンライン」のHPから拝借しました)